以前のブログでUDフォントについてのご紹介をしました。今回は教育に特化したUDフォント、UDデジタル教科書体のご紹介です。
電子黒板·タブレット端末といったICT教育の現場で効果的なUDデジタル教科書体。
障害者差別解消法の理念に基づき教科書や教材の合理的配慮を実現する、ユニバーサルデザイン対応の教科書体です。教育現場の要望に応えるため、ヒアリングや検証を基に改良を重ね、字形をデザインしました。
UDデジタル教科書体はデザイン面や字体·字形の面で特長があります。
筆書きの楷書に近く、線の太さの強弱があり見えにくい一般的な教科書体、教育現場に準じた字形ではないため、運筆の方向がわかりにくく教えにくいゴシック体。それぞれの欠点を補っているのがUDデジタル教科書体なのです。
UDデジタル教科書体は日々進化を遂げています。
今年度から実施されている学習指導要領で、外国語活動が小学3·4年生に引き下げられ、小学5·6年生では英語が正式な教科となり、読み書きの指導も行われることとなりました。こうした動きに合わせて「UDデジタル教科書体」も文科省の英語学習教材に合わせた欧文書体をリリースしました。
UDフォント作成の経験豊富なデザイナーの判断に加え、特別支援教育に携わる教員や拡大写本ボランティア等のヒアリングに基づいてデザインの原案を作成し、ロービジョン研究の第一人者中野泰志教授によるユーザ評価に基づき、デザインを改良。
ユーザ評価では、多様な弱視の見え方をシミュレートした実験に始まり、弱視の高校生や成人、教員等に実験や調査を実施。延べ241人から得られたエビデンスを収集。
今回はその中の2つをピックアップしました。
~一対比較法で見やすさを尺度化~
タブレットの画面に異なるフォントで作成した教科書の一部を対提示し、どちらがどの程度見やすいかを評定する一対比較法を用いて、見やすさの尺度を作成。15人の弱視者一人ひとりについて、国語と社会の教科書を用いて評価を行った結果、いずれの教科でも「UDデジタル教科書体」が最も見やすい書体であることがわかりました。
なお、ぼやけて見にくい、まぶしくて見えにくいという弱視者の様々な見え方を人工的にシミュレートする方法を用い、様々な条件で見やすさを検証する実験も実施した。その結果でも「UDデジタル教科書体」が最も見やすい書体であることがわかり、特にまぶしさを感じている弱視者にとって効果的でした。
弱視教育に携わっている教員·専門家65人へのアンケート調査、全国の視覚支援学校に在籍する弱視の高校生42人に対するヒアリング·アンケート調査、全国の視覚支援学校で弱視生徒を担当している教員104人に対するアンケート調査を実施。
4種類の教科書体で作成した国語と社会のサンプル教科書を見比べ、読書に適しているかどうか順位付けをしてもらった結果、弱視生徒にとっても教員から見ても「弱視児童生徒の読書に最も適した教科書体」は「UDデジタル教科書体」であることがわかりました。
昨年、UDデジタル教科書体は朝日新聞にも取り上げられ、今年度からの小学校教科書改訂に伴い、多数の出版社の教科書に採用されています。
また奈良県生駒市では奈良県で初めて市内小中学校でUDデジタル教科書体を導入していますが、導入にあたりある実験を行い、UDデジタル教科書体の有効性を実証しました。
実験では、一般的な教科書体とUDデジタル教科書体で書かれた文を読んで正しいかどうかを答える問題を用意し、1分間で何問回答できるかを測りました。その結果、UDデジタル教科書体の方が、正確さを保ちながら読めることが実証され、平均回答数も一般の教科書体より高いという事がわかりました。すべての児童生徒にとって学習意欲の向上、学力向上が期待できます。
早ければ数年後にはUDフォントに慣れ親しんだ方たちが高校や大学、専門学校に入学してきます。今何気なく使用している書類関係もUDフォントを使うことが当たり前になってくる日が近いかもしれません。
※資料提供:株式会社モリサワ様