理工系学部での「女子枠」が増えています。2023年入試では名古屋大学、富山大学、島根大学での女子枠の導入が行われ、2024年入試でも新たに23校が女子枠を導入する他、枠の拡大をする大学もあります。
2024年までに女子枠を用意する理工学部は40校となっているので、この1〜2年で急増していることが分かります。
女子枠の導入は、男女の割合が大きく偏っている理工系学部において、女性の進学を促進するために行われています。従来、理工系学部は男性の方が多く、女性の進学が少なかったため、女子枠が導入されました。
STEM分野(科学・技術・工学・数学)でのジェンダーギャップは予てから問題になっており、経済協力開発機構(OECD)が2021年に公表した調査では、日本はSTEM分野での女性の割合が、工学系16%、自然科学系27%と36カ国中で最下位でした。
こうした状況から2022年に文部科学省からの通知もあり、導入する大学が増えています。
女子枠の導入により、理工系学部における女子学生の数は確実に増えていますが、広報不足から定員を下回る学校もあるとのこと。いずれにしても「女子枠」の効果にはある程度の時間が掛かるとみられています。
2016年度入試から女子枠を導入した兵庫県立大学工学部では、当時10%だった工学部の女性比率が8年後の2024年度に15%となっておりますが、そもそも15歳の時点での学習到達達成調査(PISA)では「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」に男女での平均点の差がほとんどないと言われています。これまで男性が圧倒的に多かった学部において、女子学生の増加はようやく始まったばかり。理工系学部内の男女比が徐々に均衡していくことが期待されています。
女子枠の導入により、理工系学部の学部環境にも変化が起きています。従来は男性が主体だった学部において、女子学生の増加により、学部内の雰囲気や文化にも変化が見られます。また、女性が増えることで従来感じた「居ずらさ」の解消も期待されます。
男女の意見や価値観の多様性が尊重されるようになり、学部内の人間関係やコミュニケーションのスタイルも変化していくことも期待され、女子学生の増加によって、女性の視点やアイデアが学部全体にもたらされ、新たな発展やイノベーションが生まれる可能性も高まっています。
女子枠の導入により、理工系学部の教育内容にも変化が生じています。女子学生の増加により、教育内容がより多様化し、女性に対する配慮やサポートが充実しています。
例えば、女子学生向けのキャリア支援やメンタリングプログラム、女性教員による講義などが導入されています。これにより、女子学生がより自信を持って学び、研究に取り組むことができる環境が整備されています。
今後も女子枠の導入による理工系学部の変化が期待されています。女子学生の増加により、理工系学部全体の活性化や競争力の向上が見込まれています。
東海地区でも名古屋大学や名古屋工業大学のほか、愛知工科大学、愛知工業大学、大同大学、人間環境大学などで女子枠の導入が確認されています。
女子学生の増加により、科学技術分野におけるジェンダーバランスの改善も進むことが期待されています。女性の活躍がより促進され、さまざまな分野での女性のリーダーシップが発揮されることで、社会全体の発展に貢献することが期待されています。