トレースという言葉をご存じでしょうか。
「トレース」には複数の意味がありますが、印刷会社ではロゴマークなどのビットマップデータをパス等で形をとり、ベクトルデータに変換する作業をトレースするといいます。
ビットマップデータは画像を限られた数のピクセルで構成している為、拡大・縮小や回転といった変形を行った場合、画質が落ちて粗くなってしまうという欠点があります。
それに対して、Illustratorなどのソフトで作成したベクトルデータは、変形しても画質が変わることなく、ビットマップデータに比べてデータ容量が小さいという利点もDTPにおいては重要です。
専門用語が多く分かりにくいかと思いますが簡潔に言うと、製図や絵画などの原図の上に薄紙をおいて敷き写すことです。私も子供の頃、人気マンガの特徴的な髪形を書きたくて書きたいものの上に薄紙(トレーシングペーパー)を載せてなぞっていた記憶があります。
一言にトレースをするといっても色々なものをトレースします。
ご依頼が多いのが、地図やロゴといったものです。
黒1色のものでもカラーでもトレースは可能です。
一度データ化をしておけば次回何かを作成するときに使用できますので、データとして残していない場合は検討してみてはいかがでしょうか。
※地図に関しては、著作権の関係で原稿によってはトレースできないこともあります。
取扱説明書のイラスト作成の中でもトレースが必要になってきます。現物を実際見て、あらゆる角度から写真を撮影し、ときには分解して中の部品をチェックしたり、外からは見えない構造を確認したりします。
誰にでもわかるような取扱説明書を作成する為に、実物にできるだけ忠実にイラストを作成していくことが重要です。
以前制作実績で紹介しました、あいち航空ミュージアム様より手書きのイラストをトレースしてぬりえにするというご依頼を頂きました。
頂いたデータがこちら
完成までの手順としましては
手順に沿って完成したのがこちら
画像提供:あいち航空ミュージアム様
飛んでいるイメージを出したかったので滑走路と星や月を追加しました。
※偽造防止加工を施してあります。
トレース能力をはかるものとして試験もあります。それが「トレース技能検定」です。
この検定は、トレース技能審査基準にもとづいて行われる文部科学省が後援する検定試験で、専門家が描いた製図やデザイン画などの下書きを元に、正確にかつ美しく複写できる能力を認定するための資格です。
トレース技能検定は1級から4級まであり、試験は年一回行われています。
元の画像が粗いとどの線が正しいのかの判別が難しく、曖昧なデータに仕上がってしまうので、きれいにトレースする為には基の画像が鮮明であればあるほど仕上がりもきれいになります。
今回ご紹介しました2件はモノクロでしたが、これらに色を加えることも可能です。
例えば、ロゴのトレースのご依頼を頂いた場合、元の画像と同じような色を付けてデータを作成していきます。
細かいものであればあるほど複雑になっていくトレース作業。単純に上からなぞるだけでなく奥深い作業でした。
最後に画像提供いただいたあいち航空ミュージアム様ありがとうございました。