テクニカルライターという職業をご存知でしょうか?
テクニカルライターというと、その分野に携わらない人には、まったく想像もできないと思います。私も“仕事は何やってるの?”と聞かれると、いつも返答に困ります。
“車の営業”みたいな感じで、“車のテクニカルライター”と言ってもうまく伝わりません。一例として車の取扱説明書を書いてると言うと少しは理解してもらえますが、全てを理解してもらうのは至難の業です。
これもテクニカルライター、あれもテクニカルライターというように、テクニカルライターの仕事は幅広く、短時間では説明がうまくできないのです。
読む人の目線で書き分ける
一般的なライターとテクニカルライターの違いは、書く対象の違いです。作業が技術的に難しいものを分かりやすく説明するのがテクニカルライターになります。技術的なものを対象としている点が一般のライターとの違いですね。
家電製品の取扱説明書といった身近なものから、車の修理書など一般の人が触れることのないものもあります。どのような方が目にするかが重要となり、見る人の目線に合わせて文章を考える必要で、最も工夫が必要な部分です。
例えば、取扱説明書だと一般の人が見るので、専門的な内容や専門用語は使わないほうが良いとされます。
しかし、修理書に関しては専門的な人が見るので、その目線で書く必要があります。専門用語を使ったほうが分かりやすいこともあるので、書く際に専門的な知識も必要となります。逆に簡単な内容や用語は省略する方が良いとされます。
このように見る人の目線に立ち、分かりやすい文章を書く事が必要となってきますので、幅広い知識が求められます。
テクニカルライターの仕事内容
テクニカルライターの仕事は、原稿を書くだけではありません。
実際、自分が経験した某家電メーカーの技術仕様書作成を例に挙げると、打ち合わせ、資料収集、原稿作成、イラスト作成依頼、データ入力までの一通りをテクニカルライターの仕事として作業しました。
打ち合わせから始まり、お客様の作成資料を基に、ベース原稿に赤入れをしていきます。お客様の資料作成が遅れたりする事もあり、まずは類似品や過去の経験などから、予測して作成する事もあります。
もう一例として、某自動車メーカーの修理書作成では、前例の作業のほかに、実機の分解撮影、写真加工といったライター(文章を書く人)とは縁がなさそうな仕事もやらせて頂きました。実機の分解は、実機の構造や機能を理解する上ではとても重要で、そういった意味では、実機の分解もテクニカルライターとしては必要な仕事なのです。
ここで、実際に仕事の流れを紹介したいのですが、某家電メーカーや某自動車メーカーのお仕事を直接紹介できないため、「魚の解体」の手順書を例として紹介します。
(「魚の解体」も技術的な部分を分かりやすく説明するということでテクニカルライティングの仕事と言えます)
魚の解体手順を作成
1. 魚を見ながら解体の手順を考えて、粗原稿を作成していきます。
2. 粗原稿を参考にして、魚を少しずつ解体していきます。
3. 解体して、その都度撮影します。また、魚の構造を確認して修正等があれば、粗原稿に赤入れをしていきます。
このように、まずは粗原稿を作成した上で、実際に解体をしていきながら原稿を修正していって、分かりやすく説明していくようにします。
手順を確認しながら原稿の完成度を上げていき、パソコンで仕上げていきます。
テクニカルライティングで使用されるソフトはさまざまですが、荒川印刷では専門的なインデザイン(Adobe InDesign)、イラストレーター(Adobe Illustrator)などを使うことが多いです。そのほか、ワード(Microsoft Word)、エクセル(Microsoft Excel)でも、テクニカルライティングが可能です。
幅広い分野の仕事を、部署内外で連携して行っていますので、客先のニーズに合わせて、さまざまなソフトを使い分け、ご希望のファイル形式でデータ作成するなど柔軟に対応する必要があります。
4.写真はフォトショップ(Adobe Photoshop)で加工して、ワードに挿入します。また、文章等は赤入れした粗原稿を参考に入力して、データを完成させます。(イラストレーターで写真をイラストにして使う部分もあります。)
今回はテクニカルライティングの紹介を、家電製品や車、機械関連の分解手順ではなく、“魚の解体手順”で紹介してみました。
テクニカルライティングというと難しく感じてしまうかもしれませんが、料理という身近なものでも内容によってはテクニカルライターの仕事になります。テクニカルライターの仕事を少しご理解いただけたでしょうか?
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