大学定員厳格化が緩和することで地方の大学が厳しくなった。そのような話を耳にすることが多くなりました。2016年度から行われていた大学定員厳格化でしたが、2023年度から緩和されています。この変化がどのような影響をもたらしているのか、詳しく見ていきましょう。
大学定員厳格化とは
そもそも大学定員の厳格化とはどういうものだったのでしょうか。
大学定員厳格化とは、入学定員を大幅に超過して学生を受け入れる大学に対して、私学助成金を減額するというペナルティを課す制度です。
入学定員に対して入学者が一定数を超えるような場合、助成金をカットするというペナルティを設けることで以下のような目的がありました。
- 大都市圏への学生集中を抑制する
- 地方大学の学生確保を支援する
- 教育の質を維持する
大学定員厳格化による影響
大学にとっては、超過しない範囲でできるだけ多くの学生を入学させたいのですが、超過してしまうと助成金がカットされるという厳しいペナルティです。そのため起きたのは、合格者を少なめにし、入学手続きの情報を見ながら追加合格や繰上げ合格を出すという方法です。
しかも、複数回にわたって追加合格を出し、3月31日ギリギリまで追加合格を出すところもありました。
この影響は受験生にとっては好ましくない影響もありました。まず、最初の合格者を絞るということは、つまり大学の難易度が上がるということです。とくに都内や関西の有名校などで難易度が上がるということが起きました。
そして、追加合格や繰上げ合格が増えることで、第一志望ではない大学に入学手続きをしていた人が、入学を取りやめて追加合格になった第一志望の大学への入学を決めた場合、二重に入学金を支払ったり、引っ越しなどを決めていた場合はキャンセル料なども出てきます。このように受験生への負担にもなるケースが出てきました(辞退した大学の入学金は返還されるケースもあります)
加えて、第一志望への追加入学で辞退された大学は、入学者が減ってしまうので更に追加合格を出す。このように、連鎖的に最後まで合格者の調整を行われることで、地方の大学や受験生にとって負担になることも出てきてしまいました。
大学定員厳格化の緩和
上記のような問題があったので、大学定員厳格化の緩和が2023年度入試から行われました。入学時の定員ではなく、4年間の総定員数に対して判断することとなり、大学にとっては定員の管理が軽減しました。例えば、昨年の入学者が定員ちょうどだった場合、今回は1.3倍のところは1.6倍まで取れることになります。
超えてはいけない基準は、大学の規模によって段階的に下げられてきました。
収容人数 8,000人以上 |
収容人数 4,000人以上8,000人未満 |
収容人数 4,000人未満 |
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2016年度 | 1.17倍以上 | 1.27倍以上 | 1.30倍以上 |
2017年度 | 1.14倍以上 | 1.24倍以上 | 1.30倍以上(据え置き) |
2018年度 | 1.10倍以上 | 1.20倍以上 | 1.30倍以上(据え置き) |
大学定員厳格化の目的の1つには、都市部に学生が集中することを解消することもありました。従って、大規模の大学ほど超過を厳しくし、地方の大学に分散することを狙いました。
2023年度から導入されたこの方式で、どのような影響があったでしょうか。
厳格化によって合格者数を抑えて、追加合格を増やしていた大学は、合格者数を増やして追加合格を減らすことができるようになります。これにより、ある程度、2015年度以前に戻ることとなります。
まず、大学の難易度が下がります。関東や関西の人気大学など第一志望になりやすい大学で合格者が増える傾向となり、難易度が下がり、追加合格は少なくなる傾向になります。大学定員厳格化の目的の1つ、都心への学生の集中の緩和も緩やかになってしまいます。
この緩和によって恩恵を得やすいのは大規模、中規模の大学になります。しかし、東海地区の大学については、4,000人未満の大学がほとんどです。新型コロナウイルス感染症も5類となり、人の移動が増えてきているので、地元の学生が関東や関西に向きやすいということが起きているようです。
今後、段階的に大学全体の収容人数に対する超過を厳しくする動きはありますが、2024年度もこの傾向は続きそうです。