少子化や進学先の多様化が進む現代において、専門学校の学生募集はますます厳しくなっています。従来の広報活動だけでは、計画通りの志願者数を確保することが難しくなっているため、効果的な集客戦略を立て、実践していくことが重要です。
この記事では、専門学校の集客担当者が明日から実践できる、オンラインとオフラインの具体的な集客方法と、その効果を最大化するためのポイントを分かりやすく解説します。
専門学校の集客が重要性を増している背景
近年、多くの専門学校が「学生集めが年々難しくなっている」と感じています。その背景には、社会構造の変化が大きく影響しています。なぜ今、これほどまでに専門学校の集客が重要視されるようになったのでしょうか。主な2つの理由について解説します。
少子化による18歳人口の減少
専門学校の集客が困難になっている最も大きな要因は、少子化による学生人口の減少です。日本の18歳人口は年々減少傾向にあり、それに伴い専門学校への進学を目指す生徒の絶対数も減っています。 このパイの縮小が、各学校間の学生獲得競争を激化させているのです。何もしなければ、定員割れに陥るリスクは高まる一方であり、積極的な集客活動が学校存続の鍵を握っています。
大学との競争の激化
かつて専門学校は、特定の職業に直結する専門的なスキルを習得する場として、4年制大学との明確な差別化ができていました。しかし近年、大学側も社会のニーズに応える形で、より専門的・実践的な学部やコースを新設する動きが活発化しています。 これにより、これまで専門学校が担ってきた領域に大学が進出し、学生の選択肢が広がった結果、両者の間で競合関係が生まれています。専門学校ならではの価値を明確に打ち出し、発信していかなければ、大学に志願者を奪われてしまう可能性があるのです。
集客戦略を立てる前の準備
効果的な集客活動を行うためには、やみくもに施策を始めるのではなく、事前の準備が極めて重要です。自校の現状を正しく把握し、戦略の土台を固めることで、施策の一つひとつが大きな効果を生み出します。ここでは、集客戦略を立てる前に必ず押さえておきたい3つの準備について説明します。
集客ターゲット(ペルソナ)を明確にする
「どのような学生に来てほしいのか」を具体的に描くことが、全てのスタート地点となります。性別、居住地、興味関心、価値観、情報収集の方法などを詳細に設定し、架空の人物像(ペルソナ)を作り上げましょう。ターゲットが明確になることで、その人物に響くメッセージや、アプローチに最適な媒体(SNS、Webサイト、広告など)が見えてきます。 例えば、「地元在住で、IT分野に興味があり、Instagramで情報収集している高校2年生」といった具体的なペルソナを設定することで、広報活動の精度が格段に向上します。
自校の強みと魅力を再定義する
数ある専門学校の中から自校を選んでもらうためには、「この学校ならではの価値」を明確に打ち出す必要があります。それは、他校にはないユニークなカリキュラムかもしれませんし、業界の第一線で活躍する講師陣、最新の設備、あるいは面倒見の良い就職サポート体制かもしれません。 在校生や卒業生、教職員にヒアリングを行い、客観的な視点で自校の強みをリストアップし、それを魅力的な言葉で表現する作業が不可欠です。
競合校との差別化ポイントを洗い出す
自校の強みを把握したら、次に行うべきは競合校の分析です。同じエリアや同じ分野の専門学校が、どのような強みを打ち出し、どのような広報活動を行っているかを調査します。 競合と比較することで、自校がアピールすべき独自のポジション(立ち位置)が明確になります。「資格取得率なら負けない」「現場実習の時間数が圧倒的に多い」など、競合にはない、あるいは競合よりも優れている点を差別化ポイントとして戦略的に訴求していくことが、集客競争を勝ち抜く上で重要です。
【オンライン編】専門学校の集客方法
スマートフォンの普及により、現代の高校生にとってインターネットは最も身近な情報源です。オンラインでの集客は、もはや避けては通れない重要な戦略となっています。ここでは、Webを活用した効果的な集客方法を5つ紹介します。
1. SEO対策で学校サイトへの流入を増やす
SEO(検索エンジン最適化)とは、「専門学校 東京」「美容 専門学校 おすすめ」といったキーワードで検索された際に、自校のウェブサイトが検索結果の上位に表示されるように対策することです。公式サイトやオウンドメディア(ブログなど)で、高校生や保護者の知りたい情報(学科紹介、入試情報、卒業生の活躍など)を質の高いコンテンツとして発信し続けることで、検索エンジンからの安定したアクセスが見込めるようになります。 SEO対策は効果が出るまでに時間がかかりますが、一度上位表示されれば、広告費をかけずに継続的な集客効果が期待できる強力な手法です。
2. SNSを活用してリアルな魅力を発信する
Instagram、X(旧Twitter)、TikTok、LINEといったSNSは、高校生と直接つながり、学校の日常やリアルな雰囲気を伝えるのに最適なツールです。在校生のインタビュー動画、授業風景の写真、イベントの告知などを定期的に発信することで、学生に親近感を持ってもらい、ファンを増やすことができます。 特に、写真やショート動画で視覚的にアピールできるInstagramやTikTokは、専門学校の魅力を伝える上で非常に有効です。
SNS媒体 |
主な特徴 |
アプローチ方法の例 |
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画像やショート動画が中心。ビジュアルでの訴求に強い。 |
授業風景やキャンパスライフの写真、在校生の作品などを投稿。 |
X (旧Twitter) |
リアルタイム性と拡散力が高い。短いテキストでの情報発信。 |
オープンキャンパスの告知、入試に関するQ&A、速報などを発信。 |
TikTok |
短尺動画がメイン。若年層の利用率が非常に高い。 |
ダンスやチャレンジ企画などを通じて、学校の楽しい雰囲気を伝える。 |
LINE |
1対1のコミュニケーションが可能。 |
公式アカウントに登録してもらい、オープンキャンパス情報や個別相談会を案内。 |
3. Web広告で効率的にターゲットへ訴求する
Web広告は、特定のターゲット層に絞って情報を届けたい場合に非常に効果的です。例えば、リスティング広告(検索連動型広告)を使えば、「調理師 専門学校」と検索したユーザーに対して自校の広告を表示できます。 また、SNS広告では、地域や年齢、興味関心などでターゲットを絞り込み、フィード上に広告を配信することが可能です。オープンキャンパスの告知など、短期的に集中的な集客を行いたい場合に特に有効な手段です。
4. 動画コンテンツで学校生活を疑似体験させる
YouTubeなどの動画プラットフォームを活用し、学校の魅力を伝えることも重要です。キャンパスツアー動画、学科紹介動画、在校生や卒業生のインタビュー動画などを制作・公開することで、視聴者は学校生活を具体的にイメージしやすくなります。 テキストや写真だけでは伝わりにくい、学校の雰囲気や授業の臨場感を伝えられるのが動画の最大の強みです。オープンキャンパスに参加する前の「予習」としても機能し、入学意欲の向上につながります。
5. ポータルサイトを活用して認知度を高める
「スタディサプリ進路」や「マイナビ進学」といった進学情報ポータルサイトへの掲載も、広く認知度を高める上で有効な手段です。 多くの学生が、こうしたサイトを利用して学校の比較検討を行っています。複数の学校情報が一覧で表示されるため、他校の中に埋もれてしまわないよう、自校の特色を簡潔かつ魅力的に伝える紹介文や写真を用意することが重要です。情報収集の初期段階にいる潜在的な志願者層にアプローチできるメリットがあります。
【オフライン編】専門学校の集客方法
Webでの情報発信が主流になる一方で、実際に学校の雰囲気を体験したり、直接教員や在校生と話したりするオフラインでの機会も、入学を決める上で依然として重要な役割を担っています。ここでは、代表的なオフラインの集客方法を紹介します。
6. オープンキャンパスの満足度を最大化する
オープンキャンパスは、入学を検討している学生にとって、学校の魅力を肌で感じる最大の機会です。 参加者の満足度を高め、入学意欲を向上させるためには、内容の充実が不可欠です。模擬授業や体験実習はもちろん、在校生との座談会を設けてリアルな話を聞ける機会を作ったり、保護者向けの就職・学費説明会を同時開催したりするなど、参加者のニーズに応える工夫が求められます。参加後のアンケートで得たフィードバックを、次回の改善に活かすサイクルを回していくことも重要です。
7. パンフレットやDMで的確に情報を届ける
デジタル時代においても、パンフレットやダイレクトメール(DM)は、情報を手元に残し、じっくり検討してもらうための有効なツールです。 特に、Webサイトだけでは伝えきれない詳細なカリキュラムや、卒業生の活躍事例などを魅力的なデザインとともに掲載することで、学校の強みを深く印象付けることができます。資料請求者やオープンキャンパス参加者など、すでにある程度興味を持ってくれている層に対して送付することで、次のアクション(出願など)を後押しする効果が期待できます。
オープンキャンパスの集客を増やすには?明日から使える具体的な施策を徹底解説
集客効果を高めるための重要ポイント
これまで紹介してきたオンライン・オフラインの施策は、それぞれを単独で行うよりも、連携させることで相乗効果が生まれ、より高い集客効果を発揮します。最後に、集客効果を最大化するための3つの重要なポイントを解説します。
1. オンラインとオフライン施策を連携させる
例えば、SNS広告でオープンキャンパスの告知を行い、Webサイトの申込フォームへ誘導。オープンキャンパス参加者には、後日LINEでお礼のメッセージとともに個別相談会を案内する、といった流れが考えられます。このように、オンラインとオフラインの施策を連動させ、学生との接点を途切れさせないようにシナリオを設計することが重要です。各施策が点ではなく線でつながることで、学生の興味関心を段階的に引き上げ、最終的な出願へと導きます。
2. 卒業後のキャリアパスを具体的に提示する
学生や保護者が最も知りたい情報の一つが、「その学校を卒業したら、どのような未来が待っているのか」ということです。 就職率や主な就職先といったデータだけでなく、卒業生が実際にどのような企業で、どのような仕事で活躍しているのかを具体的に紹介しましょう。卒業生のインタビュー記事や動画は、学生が自身の将来をイメージする上で非常に有効なコンテンツとなります。卒業後の明るいキャリアパスを示すことが、学校への信頼と入学意欲につながります。
3. 在校生や卒業生の声を活用する
広報担当者が「本校の魅力は~」と語るよりも、実際に学校生活を送っている在校生や、社会で活躍する卒業生の「生の声」の方が、高校生にとっては説得力を持ちます。 オープンキャンパスで在校生が学校案内をしたり、SNSで学生が主体となって情報発信したりするなど、学生の協力を得ながら広報活動を行うことで、よりリアルで信頼性の高い情報を届けることができます。彼らの言葉こそが、最高の広告塔となるのです。
オープンキャンパスで学生を参加促進するための効果的な手法とは?
まとめ
専門学校の集客は、少子化や大学との競争激化という厳しい環境下で、戦略的な取り組みが不可欠となっています。本記事で紹介したオンラインとオフラインの多様な集客方法を参考に、まずは自校のターゲットと強みを明確にすることから始めてください。そして、各施策を連携させながら、未来の入学者との継続的なコミュニケーションを築いていきましょう。